「水の城―いまだ落城せず」 風野真知雄 著

読み終わってから随分時間がたってしまいました。
すでに記憶が曖昧になっていますが、簡単に感想をば。

水の城―いまだ落城せず (祥伝社文庫)水の城―いまだ落城せず (祥伝社文庫)
(2008/04/11)
風野 真知雄

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この作品は的が「忍城の成田長親vs攻め手の石田三成」という点に絞られているので、
同じ題材を扱った「のぼうの城」と違い、そのほかのキャラは完全に脇役化しています。
しかしそのぶん、長親と三成の人間性がクローズアップされ、
彼らと周りの人間との関係が書き込まれていくことで、
攻める側と守る側の心理が浮かび上がり、非常に魅力的な作品だと思いました。
三成は頭の切れる所を見せてはいるものの、どこかナルシストで、
しかも水攻めにやたら固執するあたりが駄々っ子のようです。(苦笑
親友の大谷刑部も呆れてしまうほどのがむしゃらぶり(といっても非常にスマートです)が、
三成を冷静なエリートというよりも、チャンスに頑張りすぎた頭の良い青年に見せていて、
本来は忍城側が主役であるはずなのに、
私を完璧に「三成さまがんばってー!」モードにしてしまいました。(笑
水攻めで返り討ちにあって溺れかける三成がまた愛おしい。(苦笑
そんな攻め手に対する忍城の成田長親。
これといった才覚もなく、守りの大将としては頼りなく見られているわけですが、
ふらふらと城内を歩き回っては各所で雑談を交わし、何気ない会話の中から情報を入手し、
ときに鋭い質問を投げかけたり指示したりしていきます。
凡庸な雰囲気と、歩いて聞き込みを重ねるあたりに、どことなく刑事コロンボを思わせます。(笑
人物として特徴がなく、華やかな策を披露することもありませんが、
ある意味その「のほほんとした」態度に、城内の者と同じような安堵を感じさせられます。
このどこか動きの鈍い長親頑張り過ぎてる三成という真逆の人物造形が、
作品に可笑し味を与え、とかく重くなりがちな籠城戦を爽やかに仕上げていると感じました。
じゃじゃ馬甲斐姫の弾けっぷりもまた微笑ましいのですが、
この作品における忍城の描写は素晴らしいですね!
蓮に囲まれた水に浮かぶ城。沼の中に点在する曲輪。
城マニアでは全くありませんが、そのままの姿が残っていたならば、
是非にも訪れたいと思わせられました。

8 Comments

まるひげ  

読了お疲れ様です♪

>読み終わってから随分時間がたってしまいました。
>すでに記憶が曖昧になっています

まずここから激しく同意でございます。
本当は、読後すぐ感想文書くべきだと重々承知しておるのですが、
結局は「記憶に残っているところ」の感想文になってしまいます…とほ。

それにしても、
この作品の主人公二人…
まったりマイペースな長親と
頑張りが見事に空回りしてる三成。
まったくもって、「かみ合わない二人」(笑)。
この小説、敵味方の両陣営を楽しく読める作品ですよね!

忍城は、本当に見てみたいですね~。
想像しかできないところが、
また想像力を掻きたてられるところでございます(わきわき)。

2009/03/29 (Sun) 01:32 | REPLY |   

こぐれっち  

この方は

風野先生は人物像をとあるパターンに落として
わかりやすくする術に長けておられると感じます(^_^)v

三成ももう少し老獪なら長親にあそこまで
してやられなかったと思うけど
あのやられっぷりもやはり石田三成なんだと思うなぁ(笑)

2009/03/30 (Mon) 19:16 | REPLY |   

豆州  

>刑事コロンボ

これは禿同でございまする!^^

この小説、純粋に面白いな~と一気に読破した記憶が。
マニアっくな題材を、丁度良い長さで
見事にまとめたな~と思いました。

タイトルも、の○うよりも好きなのですが・・・
某Zガ○ダムの主題歌をつい思い浮かべてしまいますw

2009/03/30 (Mon) 19:34 | REPLY |   

カタリーナ  

■まるひげさん

読み終わって、頭の中で感想まとめてるうちに時間が経っちゃうんですよねー。
そして記事にしようと思ったときにはあらかた忘れ去ってるというような……。(苦笑

この作品、やはりその三成の「空回り」っぷりが最高に素敵でした。
必死になればなるほどおかしいという、ほとんどコメディ。
三成はお笑い担当のようになってませんでしたか?(笑
大谷刑部とのボケとツッコミ(じゃないけど・笑)がまたよくって。
確かにかみ合わない2人ですよね。
お互いに「どうしてあんなに頑張ってるんだろう」「どうしてあんなにぼーっとしてるんだろう」と、
一生理解しあえないんだろうなあ。(笑

2009/03/31 (Tue) 01:17 | EDIT | REPLY |   

カタリーナ  

■こぐれっちさん

三成と長親って15くらい年が違うんですよね。
三成の空回りっぷりが、若い感じをなおさら出していたと思います。
忍城に振り回されてる姿がなんとも心くすぐります。(笑
仰るように、人物をわかりやすく描いておられますし、
魅せ方も上手いなあと思うシーンがいくつもあります。
その辺りがどんどん読み進めちゃう要因の1つでもありますね~。

2009/03/31 (Tue) 01:28 | EDIT | REPLY |   

カタリーナ  

■豆州さん

本当は甲斐姫が「うちのカミさん……」になる予定でしたが、
どうやら若くて見目麗しい方へ気移りしてしまったようで、残念。(爆
もう一個の作品は映像化が先行してたわけですけど、
こっちのほうが面白そうかな~なんて。
忍城はぜひ美しく!

2009/03/31 (Tue) 01:32 | EDIT | REPLY |   

kacchan  

忍城の出城だったお城がある町に住んでいますが、まだ忍城には行ったことがありません。

2009/03/31 (Tue) 18:38 | REPLY |   

カタリーナ  

■kacchanさん

忍城は城址がきちんと整備されてるのですね。
付近の公園も散策にはピッタリなようですね。
訪れてみたいです。

2009/04/01 (Wed) 00:28 | EDIT | REPLY |   

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