『のぼうの城』 和田竜 著

秀吉の北条征伐の一環として行われた忍城攻め。
石田三成に愚将という印象を与えることになってしまった水攻めによる攻城戦です。
ちょうど風野真知雄さんの「水の城」を読み始めたら、この本が回ってきてしまいました。
返却期限があるので、風野さんのを中断して読んだのですが。

のぼうの城のぼうの城
(2007/11/28)
和田 竜

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同時期に同じ題材を別な作家で……と頭を切り替えるのに苦労しました。
どうせ「水の城」のレビューも書くのでもう言っちゃいますけど、
それってつまり「風野さんのほうが面白いかな……」
ってことなんですわ。(苦笑

ま、そんな独り言はさておき、こちら「のぼうの城」なんですけれども。
図体がデカイばかりでなんの役にも立たない忍城城代成田長親
でくのぼうゆえに「のぼう様」などと呼ばれ、
周りの人が「面倒見てあげないと!」と思うほどにボーっとした御仁です。
この人が一応主役なんでしょうけど、肝心のこの方だけ最後までキャラがつかめない。
本当にでくのぼうでボーっとしているのか、あるいは深慮遠謀なのか、
その人となりを判断できないまま小説は終わってしまいます。
けれどこれが映像であれば、役者さんを通してその魅力が見えてくるんでしょう。
だってやっぱり見せ場は全部のぼう様が持ってっちゃいますからね。(笑
そんなのぼう様を総大将に守りに入る忍城を攻めるのが石田三成
三成は主・秀吉を慕いながらも冷静に観察していて、同時にライバル視してもいます。
己の策に溺れているだけでなく、秀吉への対抗意識とプライドから、
朋友大谷刑部の諫言も耳に入らないほどで、下手すると駄々っ子に見えてしまいます。
けれどそこが人間的で美味しい部分でもありました。
私はむしろ三成主役みたいな感じで読んでたくらいですから。
結局、策はあれど人の心を読まなかった三成は、
人の心をつかむことに(無意識的に)長けていた長親に勝てなかった……。
という結論になるんでしょうか、この小説の場合。

主役のキャラがつかみきれないと書きましたが、
実はこの作品の魅力はやはりキャラがそれぞれ際立ってることでしょうね。
もともとはシナリオで城戸賞を受賞していたものを、映画化を前提に作者自身で小説化したそうで、
そう聞けばなるほどなあという描写です。
脇役キャラがやたらしっかり描かれてるのもシナリオゆえでしょう。
成田側は群像劇としては面白くなりそうですし、
それに対する三成と大谷刑部のコンビも秀逸です。
場面のつなぎもいかにもシナリオっぽく、特に1回目の総攻めなんかは、
カットバック(違う場面を交互に見せる方法)の仕方がまさに映像向きでした。
おかげで普段は文章音声再生派の私でも、映像として想像しやすかったですね。
その辺がベストセラーの所以かもしれません。
とか言って、これ直木賞にノミネートされたんでしたねー。
小説という形態では書き込み不足な感も否めませんが、
いずれ映画化となった暁には、迫力ある水攻めシーンはもちろんのこと、
結構面白い作品になるのではないでしょうか。
しかしそうすると、すべてはのぼう様を演じる役者さんにかかってますね。
誰だったらいいかなあ。

4 Comments

まるひげ  

のぼう様w

カタリーナさんも風野作品とこちら、同時読みしてらしたんですか(笑)。
両者、題材は同じですが、毛色が全然違いますよね。
「のぼう~」の方は、
確かに映像向きという印象が強く、
自分にとっては少年漫画を読んでいるようなイメージでした。

って、この作品、直木賞にノミネートされてたんですか?!
確かにベストセラーでしたけど、
流石に直木賞にはならないんじゃないかと…(苦笑)。
結果が出る来週が楽しみです。

2009/01/10 (Sat) 01:00 | REPLY |   

カタリーナ  

■まるひげさん

同時読みは結構辛かったです。
全然色が違うのに、登場人物が同じって混乱します。(汗
少年漫画とはまさしく!
丹波と和泉なんかまさに少年漫画らしいコンビっぷりでしたし。

直木賞ノミネートは昨年度です。
まるひげさんの予想通り(苦笑)受賞はなりませんでした~。

2009/01/10 (Sat) 21:41 | EDIT | REPLY |   

木暮兼人  

映画化

されるといううわさもあるようですね・・・

私はてっきり、映画シナリオを小説にした時点で
映画の話は立ち消えになったのだとばかり思ってましたが
CGばりばりの映画になってしまうの??
水攻めのシーンだったら、CGは使わないほうが
迫力は出る気はしますが、そうすると制作費が
膨大になってしまうでしょうネ(アセ)

私は・・・ヒーローものにするにしては
 #ある意味アンチヒーロー小説ともいえますが
主人公のキャラがちょっと弱いような気がしていました
説得力に乏しいといいましょうか
おそらくカタリーナさんも同じように考えられて
上記の記事のように書かれたと思うのですが
小説であるならばアンチヒーローならアンチヒーローなりの
人間の魅力が読者につたわらないと、全体の焦点がぼけるような気がします

映像ならそういう欠点は視聴者側にはスルーかな・・・

この方の次回作も出版されていますが
 #たしか忍者モノ
いまひとつ手を出そうという気にならず(失礼)

2009/01/11 (Sun) 19:45 | REPLY |   

カタリーナ  

■木暮兼人さん

一応映画化の話は生きているようですが、どうなるんでしょうか。
やはりネックは制作費?(苦笑
しかし何キロもの堰を築いて水をいっきに流し込むというのは、
やはりCGでなければ見せられませんよね。
城の周りは実写でいけても、それらしく迫力出すのはなかなか難しそうです。

> 主人公のキャラがちょっと弱いような気がしていました
同感です。
ボーっとしていた御仁が思わぬ機転で城を救うという展開は、
その意外性からいってもヒーロー的であり、見所のはずなんですが、
最後の最後まで主役としては影が薄いと思いました。
むしろ正木丹波さんのほうが主役かしらと。
元はシナリオだったとわかったので、役者さんによって体現化されれば、
そのバランスによってのぼう様も主役らしく見えるんだろうと思ってみたんですけど。(苦笑
その影の薄さっていうのがのぼう様のキャラなわけですし。
もしこれが元から純粋な小説だったら、主人公選び違えたなーと思ったと思います……。

2009/01/12 (Mon) 00:44 | EDIT | REPLY |   

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