朝顔に つるべとられて もらい水

公共広告機構のCMで広く知られるようになった江戸しぐさ
5月から、市民大学で学んでました。
「江戸しぐさ」とは、簡単に言えば、江戸の経済を担う商人たちが、
商売を繁盛させるために、いかに生き、人間関係を円滑にしていくかを説いた処世術です。
「どうしたら気持ちよく人生を送れるか」というのも江戸商人の課題の一つで、
そのために彼らは人間関係を重要視し、言動に細心の注意を払っていたといいます。
先入観を持たずに、相手と対等なお付き合いをするために、
初対面時には「年齢」「職業」「身分」を訊いてはならないとする「三脱の教え」とか、
「口約束」が一番確かで、決して破ることのできない約束だったとか、
目の前の人を仏の化身と思う(=相手を尊敬する)とか……。
本当はこれらを習得している人間が江戸っ子であって、
決して江戸に住んでるからとか、「べらんめえ調」を使う人間を、
「江戸っ子」というのではない…のだとか。
それが証拠に、こうしたしぐさが身につくには三代はかかるとされ、
江戸に住まって三代目以降をようやく「江戸っ子」と呼ぶんだそうですよ。
これは目からウロコでした。
そんな中で、面白いなあと思ったのが加賀千代女の句を例にした教え。

「朝顔に(や) つるべとられて もらい水」

千代女のおそらく最も有名な句ですよね。
朝起きて井戸の水を汲みにいったら、朝顔の蔓がつるべに巻きついていて、
水を汲むことができない。
蔓を切ってしまっては朝顔がかわいそうなので、他のところへ水をもらいにいく。

これが本来の意味で、こんな優しく美しい句を詠むなんてどんなに美しい女人なのだろうと、
加賀は前田の殿様が千代女を城へ呼ぶことになるわけですが……。
それを江戸商人は、「草主人従(そうしゅじんじゅう)」、
つまり人はお天道様や草木、水といった自然に従うべきという教えとすると同時に、
「だけどそれって、アンタが迂闊なんだよ!」という戒めにもしたというんですよ。
朝顔は蔓を伸ばして成長するものなのに、それを迂闊にも井戸になんか置いたままにして、
つるべを取られて水が汲めなくなるなんて、先を読んでないということ。
要するに、この人は自分を、
「先の読めない使えない人間」
であることを証明してしまったことにもなるわけです。
ついでに、水が汲めないとなればご近所さんに水を借りなければいけない。
当時水は、売りものでもあるほど貴重だったため、借りたら返さなくてはならなかった。
結局ここで、借りるに際して、また返すにあたっても、
どのような礼儀作法をとればいいかを学び、尚且つそのときに見せるべき表情や、
しぐさなども実践的に教えていたんだそうです。
まあ確かに迂闊といわれれば迂闊……ですよね。(苦笑

でも加賀千代女といえば、私はやっぱり「鬼瓦」だなー。
例の句に感じ入った殿様が、会ってみたいと千代を城に呼びます。
「面を上げい」
そう言われて千代さんは顔を上げますが、句とは裏腹に、
千代さんはとても美しいとは言い難い……容貌をされていました。
それを見た殿様は、「加賀千代 なんにたとえよ 鬼瓦」と読んでしまいます。
女性に対して鬼瓦ですよ!? 千代さんの心中はいかばかりか……。
しかし負けてないんだな、千代さんは。
「鬼瓦 天守閣をも 下に見る」と返します。
句の終わりに、「フンッ!」という鼻息が聞こえそう。(苦笑

脱線しましたが、「江戸しぐさ」を通して、江戸の町を感じた3ヶ月でした。
でも講座でお友達になった人たちと帰り際、
「こういう場で、杉浦日向子さんの話が聞きたかったね……」
と、意見が一致。
今となっては叶わぬ願いではあるけれど、江戸からワープしてきたような日向子さんが、
みんな好きだったんだなーと、ちょっと切なくなりました。

2 Comments

Aki_1031  

うっわー!いいなーいいなー。
素敵な講座に参加されましたね~。羨ましい…!
私も遅れ馳せながら居眠りどのの影響で(笑)杉浦さんの本を読んでいます。
叶わないとは思いつつ、ご本人のナマ講座を聴きたーいと
今更ながらに思ってしまいますよねぇ。
つくづく急逝が惜しまれるお方です。。。

ところで…鬼瓦(笑)。
千代さんってば、なんてカッコイイ男前な女性なんだ!
ウィットに富んだ機転が素晴らしい!
もう一人「鬼瓦」に例えられていた御仁が某大河でいましたが、
ま、それは殿方だからいいのか(いいのか?笑)。
そういう私は、実は鬼瓦フリークです(笑)。
京都に行くと、鬼瓦とか鍾馗さんの写真ばっかり撮ってしまいます…。

2007/08/02 (Thu) 12:26 | EDIT | REPLY |   

カタリーナ  

■Akiさん
それこそご当地お江戸なら、もっとたくさん講座があると思いますよ。
両国の「大江戸博物館」でも講座があるって聞きましたし。
それこそいろんな資料や模型を見ながら勉強できるなんて羨ましい~。
それにしても、Akiさんが鬼瓦フリークとは!
鍾馗さまは、京都にはたくさんいらっしゃいますよねー。
どちらもいろんな顔をされてるので、写真を撮っちゃう気持ち、よくわかります!
今度是非お気に入りの一枚を見せてくださいな。

2007/08/03 (Fri) 01:20 | EDIT | REPLY |   

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