14才の母

雑誌「週刊トップ」の編集長/波多野卓(北村一輝)が、原稿用紙に「14歳の母」と書く。
彼はしばらく考えて、それを「14才の母」と書き直す。
すべてはここに表れていたように感じます。

14才で妊娠し出産するという内容のこのドラマは、賛否両論、
あちこちで様々な議論を生んだようです。
放送前、脚本家の井上由美子さんが、
「良い悪いは別として、このドラマをきっかけに命について考えて欲しい」
というようなことをおっしゃっていたので、その目的は達せられたのではないでしょうか。
しかし私はこのドラマを通して、
「ドラマの在り方」というものに疑問を抱くようになりました。
ドラマはドラマとして、作り物の世界として諦めてしまってもいいのでしょうか。
2年前にNHK大河ドラマ「新選組!」を見ていたときにも、同様の論争が繰り広げられました。
史実にどこまで忠実であるべきか、どこまで創作が許されるのか。
私自身は、事実として残っていることをしっかり押さえていて、
これは絶対に有り得ないという部分をきちんと見極めてあれば、
あとは作者の解釈、想像を一緒に楽しみたい派です。
それは私たちが知りえない過去の出来事で、想像でしか補えないものがあるから。
しかし現代を扱うドラマにおいては、そうはいきません。
自分の知らない分野の話であったりすることはあっても、
だからといって、全く知り得ないというものはないように思うのです。
例えば「のだめカンタービレ」のように、
ギャグを取り入れたある意味作り物めいたドラマは別ですが、
この「14才の母」は、実際問題として現代社会に「命を問いたい」というコンセプトだと、
夢やおとぎ話ではなく、リアルに問題提起をしたいドラマなのだと私は理解してきました。
そういう場合、「やっぱりドラマなんだよなあ」と思わせてしまっては、
効果が薄れてしまうんじゃないでしょうか。

ドラマの中で、14才という年で妊娠してしまう一ノ瀬未希(志田未来)は、
あまりにも恵まれすぎています。
世間の目は当然冷たいでしょうが、家にはそれなりの経済力があって、
家族は皆応援してくれている。
心強い医師がついていて、学校の担任も、学校も一応理解を示してくれた。
未希の相手である15才、桐野智志(三浦春馬)も未希を捨てず、
何とか力になろうとしている。
そして最終的には彼の母親も認める気になりつつあって……。
でもここまですべてが揃うことなんて、あるのでしょうか。
未発達の体で赤ちゃんを宿すというリスクを抱えるだけでなく、
それに加えてもっとずっと厳しい状況が待っていることのほうが、
本当はずっと多いように思うのですが……。

ドラマは「子供を生む」ことがゴールになってしまいましたが、
それはスタート地点であり、本当は子供を育てるほうがずっと大変なわけです。
生むということより、どう育てるのか。
そちらのほうが「命」を考える上で、ずっとずっと重要なんじゃないのかな……。
未希と智志は将来的には一緒になって、一緒に子供を育てたいと言ってました。
そして、子供が5才になって保育園に上がったら、また勉強ができるというようなことも。
未希自身はそれでもまだ19だし、やり直しはできると。
それは彼らの夢であり、希望であり、もちろんとても大切な想いです。
未希ならやれるかもしれないけれど、でもやっぱり「甘い」と思ってしまう。
だから「14歳」ではなく、「14才」なのだと変に納得してしまいました。
14才と書くほうが、ずっとずっと幼い印象を与えますから。

志田未来ちゃんは、どんどん「女」になっていく姿が魅力的でした。
何も知らない普通の女の子が、恋をして、子供を身ごもって、出産して母になる。
それが演技の上とはいえ、毎週表情が変わっていったのは見事で、
最後には、もう子役ではなく、志田未来さんという一人の女優さんだなあと感じました。
そうそう、あと田中美佐子さんの手!
女優さんのきれいな手じゃなくて、お母さんの手をされていたのがすごく良かった。
指がちょっと太めで爪も短くて、未希を抱きしめるとき、頭をなでるとき、
暖かくて安心できそうだな、ママの手だなって、いつも微笑ましく見ていました。

この作品には、それがテレビ局として賭けになったとしても、
こういうテーマを扱った以上、もう少し厳しい現実を描いて欲しかったなというのが、
一視聴者としての感想です。
それでも私自身がどんな風に生まれ、どんな風に育ててもらったんだろうと、
今一度、考えてみるきっかけにはなりました。
私が生まれたとき、みんな笑って迎えてくれたのかな、なんて。

4 Comments

レッド  

才と歳

校正者の私ですが、校正者として見た場合、「14才」とあれば概ね、「14歳」に直すように赤字を入れるかと思います。
(たとえば新聞用字用語集などでは「才」ではなく「歳」を用いたほうが好ましい、とされています)
一般の人より漢字に敏感と思われる雑誌編集長・波多野がなぜわざわざ「歳」ではなく「才」を使ったかというのは、カタリーナさんも取り上げてらっしゃるようになにかと興味深いところですが、私自身はあれは、「才」という俗な字を用いる事によって逆に、
「これは小説世界のようなファンタジーじゃなく、ごく身近に起こりうる事である」
という主張を持たせたかったのかなあ、と感じました。

という意味では、ドラマが3カ月かけて描いた「妊娠・出産にまつわるあれこれ」はヒロインやその周囲の人々にとってはいまだ物語(14歳)の域という事にもなり。
赤ちゃんは未希の腹の中から出て保育器へ入り込み、「現実」として機能し始めるのは退院の日、未希が「そらちゃん」という「重い」(というヒロインの台詞もあり)リアルを実際にその腕の中に抱えたときからです。そこで初めて、「14才」の苛酷で生臭い、物語じゃない「現実」が漸く始まるんですよ、というメッセージなのかなと。
波多野が最後に
「そして、」
と書いて、そこでぷつんとドラマが終わるというのも、赤ちゃんを抱いて笑った14才の母にとって、「そして、」のその先は最早おとぎ話ではありませんよ、という意味で、
「でも、ドラマは敢えてそこには踏み込みません。『そして、』の先は、あなた自身が考えてください」
なのかなと。

あるいは単に、続編制作を目論む作り手の意志という事なのかも知れませんが(笑)。
同局の『女王の教室』も、本編よりも続編のほうが、より痛いドラマになっていましたし。志田未来さん好きなので、『14才の母』のその後も、ちょっと観てみたい気がします。

2006/12/21 (Thu) 12:25 | EDIT | REPLY |   

カタリーナ  

■レッドさん
波多野が書く「そして、」はとても印象的でした。
余談ですが、あれ、北村さんご自身の字ですか?
役にあってる気がしたんですが、結構きれいな字だなあと思って。
レッドさんのコメントを読んで目からウロコです。
そうか、敢えて所詮ドラマと思わせる内容を提示しておいて、
実はその先にある厳しい現実を「考えさせる」というようにも捉えられるんですね。
そうなると、やはり続編を検討しているようにも思えますね。
実際、担任の先生の曰くありげな過去だとか、
波多野の事情なんかもいろいろありそうなのに、
結局明らかにならずに終わってしまったので、消化不良でもあったんです。
続編やパート2は、面白さが激減するのはなぜなんでしょう。(苦笑
この作品ももし続きを作るなら、徹底したものを見せて欲しいところです。

2006/12/22 (Fri) 23:52 | EDIT | REPLY |   

miyukichi  

 実は私も、見ていました。
 カタリーナさんとはちがって、
 私はあの終わり方に、かなりホッとしました。
 基本的にハッピーエンドが好きなこともありますが、
 (かといって必要以上になぁなぁはイヤですが)
 これから厳しいだろうってことは予見させつつ、
 希望もほの見えるエンディングだったように
 思えました。

 私的には、1回目が一番ありえなかったです^^;;
 ああなったことも「設定のため」としか思えない
 不自然ぶりだったし、
 そこから妊娠が判明するまで1度も会ってないってのも
 かなり不自然に思えて。

 あと、本題とはずれそうですが、
 いまどき手書き原稿はないんじゃない!?
 って、そこもつっこみたかった^^;;

 横レスですが、レッドさん、同業者でしたよ、びっくり。
 (editorなので、校正にかぎらないですが) 

2006/12/23 (Sat) 01:01 | EDIT | REPLY |   

カタリーナ  

■miyukichiさん
1回目……確かにありえないというか、あれで妊娠というのには、
ちょっと無理がありましたよねえ。
波多野が手書き原稿というのも、私も最初は「え、今時!?」と思ったんですが、
どうも彼は戦地のジャーナリストかなんかをしていたようでもあるので、
その頃の名残で手書きにこだわっているのかなあとか、
何とか自分を納得させて見てました。(笑

私も、希望を感じさせるラストには賛成です!
ただ全話を通してすべてが上手く行き過ぎていることに、
どうしても「所詮ドラマ」という思いが拭えなくて、
それを引きずったまま迎えたラストだったので、「頑張れ」という気持ちより、
「これでいいのだろうか?」という思いが強くなってしまったんです。
あんまり「働く、働く」と言われてもなあって。(苦笑
でも後味は決して悪くなかったですよ!
少なくとも、何かを考えさせるドラマだったと思います。

2006/12/23 (Sat) 21:19 | EDIT | REPLY |   

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