天に返す

幼い子どもが、思いがけない事故で命を落としました。
もう半年くらい前の話です。
小さな新聞記事に記された名前にどきっとしたことを、今でも本当に良く覚えています。
しかし、私は彼の苗字も知らなかったし、正確な住所も知りませんでした。
ただ、下の名前と年齢、住んでいる区域だけが一致していたのです。
「まさか…!?」
そう思っても事実を確かめる術がなく、半信半疑のまま月日が過ぎました。

そして今日、行きつけの(と言いながらも半年ぶり…)カフェで真実を知りました。
「カタリーナさんて、Kくんのこと知ってたっけ?」
「え? まさかやっぱり?」
Kくんはそのカフェの常連さんでした。
いつもママと一緒にやってきて、明るい笑顔を振りまいていました。
何しろハンサムだったこともあり、カフェのマスコットみたいな感じだったのです。
私はやはりそこのカフェの常連として、彼ら親子と知り合いました。
といっても、実際に遭遇したのは3回くらい。
年齢の近かったママさんとも話が弾み、Kくんを囲んで笑い転げたものでした。
そして最後に会ったのが、おそらく事故の2週間くらい前…。
どうしてあんな事故が起こってしまったのか、マスターが少しだけ話してくれましたが、
聞けば聞くほど胸が痛み、返す言葉が失われていきました。
5本の指にも満たない年数しかこの世にいなかったけれど、
たった数年で彼を天に返さなければいけなかったけれど、
それでも彼に出会えた喜びはかけがえのないものだ、とマスター。
「天に返す」
その言葉がひどく切なく、けれどもとても暖かく響いて聞こえました。
たとえそれが、生きている者の慰めでしかないとしても。

0 Comments

Leave a comment