消えたお金

「本当にがっくりきたんだって」
そう言って、N氏は右手で顔をなでた。
どうも、かなり落ち込んでいる様子。
詳しく聞いてみると、2週間ほど前に、銀行のATMでとんでもないことを体験したらしい。
その日N氏は、ちょいと儲けたお金を自分の口座に入れるため、
ルンルン気分(←本人の言葉)で銀行に出かけた。
封筒には23万円。
このまま儲けていけば老後も安心だと、彼はいつになく浮かれていたという。
さて、彼はATMの前に立つと、お札を入れる口に23万円を投げ込み、
そのまま左脇にあったシュレッダーに空の封筒を投入。
ATM脇のシュレッダーは結構口が狭く、明細でさえピンと伸ばさないと入っていかない。
ましてや封筒などは、手を添えないと途中でつっかえてしまう。
案の定、N氏はなかなか入っていかない封筒にてこずり、
結局両手で引っ張りつつ押し込むようにして、封筒をシュレッダーにかけた。
と、そこでATMが現金を数え終わり、確認画面に切り替わった。
【現金 21万円   宜しければ確認を押してください】
「おっかしいんだよなー。オレは23万入れたはずなのに、21万しかないんだ」
彼はもう一度やり直したが、やはり21万しかなかったという。
そこで彼は青くなった。
もしや、シュレッダーにかけた封筒に、残りの2万円が入ったままだったのではないか…?
「いやさ、そういえば封筒が思ったより重くてさ。
それにシュレッダーになかなか入っていかなかったんだよな。
あんまり入らないもんだから、両手まで添えたりしたくらいでさ…」
N氏は急いで行員を呼び、シュレッダーを開けてもらった。
するとその中には、ふわふわの綿くずが!
そう、よく職場においてあるシュレッダーは書類がそうめんのように切り刻まれてくるが、
銀行のシュレッダーはさらに細かく、まるで綿くずのようになるまで粉砕してしまうのだ。
それでも行員は綿くずの中を丁寧に調べてくれ、ついに気の毒そうに聞いてきたという。
「あー、本当にこれはお札みたいですねえ…。持って帰って繋げますか?」
「は? あ、いや、いいです。もういいです…」
N氏は綿くずに呆然とし、とぼとぼと帰ってきたそうだ。
いくらあの綿くずをもらったところで、日銀で交換できるほどには復元できない。
「そうめん状態なら意地でもやるけどさ、綿くずじゃあどうしようもねえもんな」
だけど、封筒をシュレッダーにかけるときになぜ気づかない?
そもそも、なぜ封筒の中を最後まで確認しない?
ちょっと信じられない展開に、呆れるやら可笑しいやら。
「浮かれすぎてて、どうでもよくなってたんだろうなあ」
彼は天井を見上げて、ぐしゃぐしゃと髪をかきまわした。反省しきりのようだ。
「まあさ、いろんな人に話して笑ってくださいよ」
最後には、あっけらかんと笑った。
現金をシュレッダーにかけた男。
今後シュレッダーを見るたびに思い出すだろう。

2 Comments

dayu  

私もいつかやりそうです。
気をつけなきゃ。
今のご時勢、2万円は大金ですよね。

ところで。
また違うバトンが回ってきました。
今度は「調味料バトン」。
http://blog.livedoor.jp/ohayo_kun/archives/30865375.html

もしネタに困ったときは、けっこう自分の食生活を振り返る上で面白いバトンですので、どうでしょうか?

2005/08/31 (Wed) 16:18 | REPLY |   

カタリーナ  

■dayuさん
例えそれが1000円でも、シュレッダーにかけたとなると…^^;
ショックは大きいですよね。
調味料バトン面白そうですね。
いずれ回答させていただこうと思います♪

2005/09/01 (Thu) 00:34 | EDIT | REPLY |   

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