「愛人」という言葉

ある女性が、「自分には愛人願望がある」と言いました。
彼女は細く白いうなじと切れ長の目が美しく、もし着物を着せたら間違いなく和の美人、
色香が匂い立つような気品があって、おかしな言い方かもしれないけれど、
「愛人」という立場がピタリとはまってしまうような雰囲気を持った人なのです。
だけど、何か引っかかりました。何かが違うと。
そう、彼女はもちろん既婚者なのですが、
「不倫願望がある」とか「浮気願望がある」などとは言わず、
わざわざ「愛人願望がある」と言ったのでした。
考えてみれば、不倫と愛人って世間的に見れば同じような状況だけれども、
持っているニュアンスとか印象ってずいぶん違いますよね。

そこでまず辞書を引いてみました。
愛人:(世間に知られたくない)恋愛の相手
不倫:男女間の、道に外れた関係

(以上、三省堂現代国語辞典より)
それぞれ、確かにそうですね。
だけど私の印象としては、「不倫」は男女ともに対等な立場で、
お互いに、どこか罪の意識が見え隠れしているように思えます。
対する「愛人」は、男女が対等な立場ではなく、片方に権力や財力があり、
少なくともその人は罪の意識などなく、いっそ堂々としているイメージがあります。
「愛人」には当人たちの愛情の深さに関係なく、お金とか契約の匂いもしませんか?
じゃあ、そういう状況にある当人たちはどうなんだろうかと考えると、
おそらく、「私はあの人の愛人」とか「愛人がいる」などとは言わないんじゃないでしょうか。
多分、「恋人」とか「彼女(彼氏)」とかって思ってると思うんですよね。
ただ男性の中には、「愛人がいる」と言いたいという方もいらっしゃると聞きます。
征服欲、支配欲みたいなものが満たされるんだとか。
逆に、そういう状況にある女性は「愛人とは言われたくない」らしいのです。
また、自分の夫や妻が不倫をしているとわかった場合や、他家の噂として話すときなどに、
恨みや嫌味を込めて「愛人」などと言ってしまうこともあるように思います。
ということは、世間一般的に、「愛人」という言葉には、
非常にダークでマイナスなイメージが含まれているということなのかもしれません。
それはもしかしたら、権力者が妻以外の女性を囲って、
それを誇示するようなドラマや小説の影響が強いのかもしれませんけど。

こう考えてくると、冒頭の女性はなぜわざわざ「愛人になりたい」などと言ったのでしょう。
彼女は権力や財力のある男に支配されてみたいのでしょうか。
日陰にありながら、愛する人を支える女になってみたいのでしょうか。
う~ん、どちらも似合ってしまいそうで怖い。
因みにその場にいたある男性は、「愛人は3人まで。それ以上は体力的にムリ」と爆弾発言。
彼にとっての愛人とは、おそらく浮気や不倫となんら変わりない意味だと思います。(苦笑

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