氷菓 第二十話「あきましておめでとう」

初めて見た京アニ作品は「氷菓」でした。
放映は2012年、7年前の作品です。
原作は同名の小説で、高校生を主人公とした推理モノ。
コナンくんのように重大事件を扱うのではなく、
日常のふとした謎や、学校や地域で起きるちょっとした事件を解決していきます。
小説に物語の舞台は明記されていないようですが、アニメは飛騨高山でロケハンをしたとありました。
高山市の公式観光サイトにも、モデルとなった土地が紹介されています。

【氷菓×飛騨高山】

初めて作中で風景を見たとき、率直に「きれいだ」と思いました。
ジブリの風や温度を感じさせる作画も素晴らしいと思っているのですが、
京アニの絵には、それとはまた別な美しさがあると感じました。
透明感、というか、あるいは光と影の使い方というか、とにかく絵が澄んでいるんです。
それがリアルでもあり、絵画的でもあり、高校生の物語を描くのにピッタリでした。

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昨晩、唯一録画を残していた第二十話「あきましておめでとう」を見直してみました。
この回は、「納屋に閉じ込められた奉太郎とえるがどうやって脱出するか」が課題でした。
納屋でのシーンが多く、神社のカット以外は繊細に描かれた風景は拝めないのですが、
その代わりに、暗闇に浮かび上がるえるちゃんのほんのり白いうなじが見どころのひとつになっていたと思います。
未熟できれいな肌って、闇の中で見たらこんなふうに見えるかもなと思わせる、
ちょっとだけ色っぽさが漂ったシーンでした。
納屋の中に、高校生の男女がふたりきり。
女の子の方は名家のお嬢様で、クラスの男子と一緒のところを見られたらマズイ立場。
一方男の子の方は、そんな女の子のことをはっきり意識しているわけではないけれど、
気にならないわけじゃないという、いかにも高校生らしいドギマギ感が、
うなじの白さに反映されていたように思います。
こんなふうに絵と話がすごくマッチしていただけでなく、
奉太郎の中村悠一さん、えるの佐藤聡美さんの演技もまた良かったんです。
中村さんは、こういう表情があまりなくて、人畜無害そうな男の子、上手いですよね。
絵と話と芝居のアンサンブルが見事に調和した、この実に甘酸っぱい空気感がたまらなくて、
唯一消さずに保存しておいたのでした。

京アニは、ほぼすべての制作作業を自社で賄っていると聞いています。
作業がとても丁寧なので、「信頼してぜひ任せたい」という発注者が少なくないとも読みました。
年間の制作本数はあまり多くない印象ですが、
仕上がりの美しさを思えばそれも納得がいく気がします。
先日の事件で、多くの従業員の方が犠牲になりました。
会社は再建されるでしょうし、再出発するべきだと思います。
そしてきっと、さらにクオリティにこだわった作品を作ってくるだろうと思います。
でも失われた命、人材、才能は戻ってこない。
私はエンドロールでスタッフの名前を何となく眺めるのが好きですが、
今回氷菓のエンドロールを改めてじっくりと見ながら、
ここに名前の載っている人、名前は載らずとも制作に携わった人に、
いつも以上に思いを馳せました。

ずっと続くはずの日常が、こんなふうに、いきなり、何の前触れもなく、
無情に理不尽に断ち切られてしまうことがあることを、受け止めたくはありません。
なぜ、何のために?

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