宝塚花組公演『CASANOVA』

花組東京公演の千秋楽を観劇してから、もう1週間が経ってしまいました。
これが平成最後の観劇となりました。

私にとって千秋楽を見るということが、生まれて初めての経験でした。
もちろんサヨナラショーを劇場で見るのも初めて。
千秋楽がこんなにも特別で、何とも言えない高揚感に包まれることを初めて知りました。
簡単に言うと「テンション上がりっぱなし」ということなんですが、「浮つく」とも違うし、「舞い上がる」とも違うし、
開場から劇場を出るまでの間、ずっとふわふわと心地よい雲の上にいる感じでした。
とても不思議な空間で、今思い返すと、あの場にいたことさえも不思議に思えてきます。
もちろん、この公演で退団される方のファンの皆さんの白服コーディネートを見るのも初めてでした。
本当に小さな子からおじさままで、あらゆる年代のファンが白い服をまとっていて、
他にはない雰囲気に、「ああ宝塚だなあ」と改めて感じた瞬間でもありました。

CASANOVA東京


『CASANOVA』そのものは、それほど深い内容のある作品ではありません。
1,000人以上の女性と浮名を流してきたカサノヴァが、
ベアトリーチェという天真爛漫で進歩的な女性に出会い彼女ひとりを愛しぬくことになる。
あらすじ的にはこれだけの話です。
サブタイトルに「人生には恋と冒険が必要だ」とあるのですが、
カサノヴァって作中でそれほど冒険して……ないよね!?!
それでもこの作品が良かったのは、しっかりと味付けされたキャラクターたちと、
耳馴染みの良い音楽、ポップで華やかな衣装、様々な種類のダンス、
そして多用された大人数のナンバーによると思います。
とにかく賑やかでみんな楽しそうだし、見ていても楽しい。
特に娘役が舞台にいいっぱいいると、やはり華やかさが増しますね!

個々のキャラが立っていて、SNSでは観劇後のいろいろな妄想がわんさか流れていました。
私は個人的に、前日談やら後日談やらを妄想させる作品は駄作ではないと思っているので、
そういう意味ではこのCASANOVAは本当に面白い要素をたくさん含んでいる作品だと思います。
ただ、それだけキャラが立っているのに、話は浅くてとっても表面的なんですよね。
前段で「カサノヴァ冒険してない」って書きましたけど、もっと冒険活劇になると思っていました。
そしてできたはずなんですが……どうしてこなった。残念過ぎる。
主役があんまりピンチに陥ってないですし、ドラマとして何かこれという葛藤もなかったような。
(そっちは裏の主役のコンデュルメル夫妻が担当していると言えますが)
理由のひとつには、音楽をドーヴ・アチア氏に依頼した点を挙げることができます。
曲はとても素敵でした。私は『1789』より好きです。
でも脚本というよりも曲ありきになってしまったところがあって、とにかくナンバーが長い。
さすがに外部委託の音楽を削ることもできなかったとは思いますが、
ひとつのナンバーを短くして(レプリーゼ多用してもいいから)、もっとエピソードを深く書いてほしかった。
そうしたら、かなり満足度の高い作品になったのになと思います。
楽しかっただけに、本当にもったいない。

明日海さんのカサノヴァは、本当にモテる男でした。
登場しただけで、もう文句なく納得します。
美しくて華やかでセンスが良くて、優しくて気遣いもできる。
自分がモテることをよく知っていて、自信もある。
振り向かない女はいないとわかっていてそう振る舞うけれども、それが嫌味にならない。
多分男にも信頼されていて、いわゆる「人たらし」なんですよね。
格好良いのともイケメンとも違うので、演じるのがなかなか難しい役だと思いました。
だからこそ、明日海さんの持っている魅力で成立している部分が大きかったように思います。
仙名さんのベアトリーチェは、ちょっと猪突猛進なところがある進歩的なお嬢様。
天真爛漫で好奇心旺盛で、出てくるだけで場が明るくなる、まさに少女漫画のヒロインでした。
しかもそれだけに終わらず、知的な女性であることもにじませたのは、仙名さんの持ち味故かと思います。
退団公演での「わあ、こんな仙名さんが見たかった!」という役で、とても楽しませてくれました。
柚香さんのコンデュルメルは、あわよくばヴェネツィアの実権を握ろうと画策している審問官。
カッコいい悪役ポジションなのに、どこかコミカルにいじられるシーンが散見され、
なんとなくキャラが中途半端になってしまった感が否めません。
柚香さんは悪役を演じるというよりも、コンデュルメルという野心家を真剣に演じておられたので、
半端にコミカルな芝居やリアクションを入れた、演出の問題だと思います。
鳳月さんはまさかの女役でコンデュルメル夫人を妖艶に魅せてくれました。
夫の裏切りで弱った心をプライドで武装して、己を黒魔術でごまかしながら生きている女性。
気の強い不気味な女性ではなく、どこか可愛らしくて抱きしめてあげたくなるような女性だったのは、
鳳月さんの繊細なお芝居あってこそだったと思います。
また開幕直後から話題をさらっていたコンデュルメル夫人のナンバーは本当に圧巻で、
切なく苦しい歌を存分に聴かせてくれました。
とにかくコンデュルメルのご夫妻はいろいろと複雑過ぎて、妄想が止まりません(爆)。
瀬戸さんのコンスタンティーノは、地位に惹かれてコンデュルメルに加担する金持ちの商人。
瀬戸さんの華やかさと一途さが「成金」っぽさを上手く引き出し、作中のスパイスになっていました。
ラストに花野さんのゾルチ夫人と一緒に空気を読まずにラブラブで登場するシーンなど、
瀬戸さんの格好良さと花野さんの美しさがなければ成立しません!
バルビ神父の水美さんは、お調子者だけど悪気のない素直な男で、
太陽のような水美さんにピッタリなイケメンでした。
懺悔に来た女性を妊娠させてしまうような神父ですが(苦笑)、
この人家庭を持ったら、案外子煩悩でいいお父さんになる気がします。
水美さんの根っからの明るさが、いろいろな場面を盛り上げてくれました。
桜咲さんが演じたベアトリーチェの侍女ダニエラは、しっかり者でルールには厳しいけれど、
新しいことにも理解があって、いつでも微笑んで待っていてくれるような人。
こちらもぬくもりのある、桜咲さんの落ち着いた声と台詞回しが活きて、
彼女にピッタリな役だったと思います。
バルビ神父といつの間にかいい仲になったようですが、
ふたりの間に流れる雰囲気がとても暖かくて、描かれていない部分を埋めるだけの魅力がありました。

実はここで上げた4つのカップル、女性側が全員花組から去ってしまったのですよね。
花野さん、桜咲さん、仙名さんは退団され、鳳月さんは月組へ。
みんな花男たちから素敵に送り出してもらったんだなと思うと、
宝塚に復帰して1年半にしかならない私でも、胸に来るものがありました。
次回公演から、花組の雰囲気はガラリと変わるのでしょうね。
そしてそれが宝塚。
私が宝塚に復帰してここまでのめり込めたのも、この花組があったからこそと思っています。
花組に関しては、おそらくこれが見納め。
ゆえになおさら、忘れがたい公演となりました。

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