宝塚花組公演『ポーの一族』(キャスト)

「ポーの一族」で感想をググると、みなさん長文&シリーズ連載になっていて、
どうであれ「語りたくなる」作品には違いないようです。
かく言う私も、前回全体を語って今回シリーズ第2回ですからね。(苦笑)

ところで今回のプログラム。
初日開けてからずっと評判ですが、本当に綺麗で凝ってます。
中に入っている綴じ込み冊子がちょっとした写真集になっていて、
ファン垂涎の構図等々にかなりの騒ぎになっていました。
これで通常と同じ1,000円とか、小池先生の意気込みが伝わってくるようです。
「TAKARAZUKA」の文字が十字架っぽいですが、作品に合わせたのかな。


ポーの一族

キャストですが、再現率がすごい。
もともと作られた美しさを持ち味とする宝塚なので、
作られた「キャラクター」を、「生きた人間に作り上げる」ことは得意中の得意なのだと思います。
メイクだけでなく、所作や佇まい、衣裳の着こなしから心情まで、
とにかく研究し尽くして表現されている。
原作ありの作品の実写化って、その作品を忠実に再現することが求められているわけではなく、
その「世界」を忠実に作り出すことができるか、なんだと思っています。
だって漫画だったら、人がその絵の通りの顔や体型になれるわけじゃないですしね。
それでもそこをすりよせてくるのがタカラジェンヌで、
舞台映像を見ていたときに「この姿、どこかで見たことある……」と思ったら、
原作コミックの一コマだったなんてこともありました。

明日海 りお(エドガー)
まず姿も声も少年であることに驚嘆します。
永遠に少年としてしか扱われないというのに、実は中身はしっかりしたおとなで、
「生きねばならなぬ」という現実と諦観とのはざまで葛藤する気持ちが胸にひしひしと伝わってきます。
明日海さんは「ロミジュリ」のときにも感じたのですが、
感情が180度転換するときの切り替わりがすごいんですよね。
バンパネラの本性を表したときの豹変ぶりには、本当に恐怖を感じました。
「あ、殺される!」と本気で思いましたもん。
彼はこの物語の中で唯一意志とは別にバンパネラになった人。
その彼の孤独は、納得してバンパネラになった人たちとは一線を画すのでしょうね。
常に自分の人生を、生きる意味を問うていて、
生きることに必死になればなるほど世の中から浮いていく痛々しさ。
神秘性を備え、耽美的な雰囲気も醸し出せる、稀有な役者さんだからこその、
美しくて物哀しく、そして共感を呼ぶエドガーでした。

仙名 彩世(シーラ・ポーツネル男爵夫人)
トップ娘役さんがトップさんと組まないという、最近ではたまにある変形パターン。
でもシーラは、この作品における正当なヒロインでした。
エドガーに慕われ、男爵に心底愛され、クリフォードの心にさざなみを起こす。
人としての純粋さと、バンパネラとしての人ならざる妖艶さがなければ、
この関係は納得させれないし、成り立ちません。
仙名さんは細やかな表現としぐさが素晴らしく、人であったころの可愛らしさと、
バンパネラになってからの一種の冷たさ、そこからにじむ壮絶な妖艶さにハッとさせれました。
声が本当に美しくて、全体に高くて軽めなトーンなところがよりシーラの透明感を出していて、
でも力強く響く歌に、「シーラは決して悲劇のヒロインではない」と思いました。
自分の意志で自分の人生を貫いた、とてもしなやかで強い女性です。

柚香 光(アラン・トワイライト)
アランは威張ることでしか自分の居場所を確立できない、とても孤独な男の子です。
荒れてるけど、実際はとても繊細で脆いんですよね。
ひとりで立っているといつもどこか心細そうで、
相談したいのに誰にも相談できない、誰にもわかってもらえない苦しみが見えました。
アランは闇を抱えた美しい男の子ではありますが、ことさら大きな特徴があるわけではないので、
それはそれでキャラクターを際だたせるのは難しいのではないかと思います。
その上で、エドガーの心が共鳴するような人間でいなければならない。
柚香さんは個性的な役が似合うタイプなんじゃないかと思うのですが、
そういう人だからこそ、このアランを「アランとして」息づかせられたのかなと思いました。

瀬戸 かずや(フランク・ポーツネル男爵)
作中で最初からバンパネラで、迷いや葛藤などは持っていない人です。
それどころか、バンパネラ、ポーの一族であることに誇りを持っています。
彼はバンパネラになったエドガーと疑似家族を作り、父親としての役割を果たしているのですが、
何かにつけて危なっかしいエドガーをなんとか支えようとしている、
厳しいけれども優しくて暖かい人物でした。
そしてシーラを愛する気持ちの深さ。
瀬戸さんの落ち着いた雰囲気と立ち姿の格好良さが、男爵の男爵たる所以を魅せてもくれました。
原作の5割増で魅力的だったと思います。

鳳月 杏(ジャン・クリフォード)
次号で語り倒します。(苦笑)

桜咲 彩花(ジェイン)
「田舎のお嬢さん」と婚約者(クリフォード)から言われちゃう人ですが、いや本当にそうなの。
桜咲さんが演じるジェインは、本当にちょっとイケてないどんくさい感じが絶妙で、
「良いお嫁さんになるだろうな」って感じはするけど、恋愛対象としてはかなり重い。
モテる男と婚約してしまって、「本当に私で良いのかしら」と自信を失っていたり、
婚約者が他の女に色目を使っているところをハラハラしながら見つつも、
でもそれを口に出したり態度に見せたりはできないあたりに、
多分イライラする女性もいるだろうし、「わかるー!」と共感する女性もいるんじゃないでしょうか。
確かにひかえめではあるけれど、決して流されない芯の強いところも見えて、
私は桜咲さんのジェイン、わかるなーと思ったほうです。
そうそう、クリフォードとダンスするシーンは本当に見ていて幸せになるし大好き!

華 優希(メリーベル)
儚げな少女を、あざとくなく自然に演じられるってだけで貴重だと思います。
可愛いくって人形みたいな少女を見せてくれただけで、もう満足。
そのメリーベルもあどけない少女の姿の中に、100年生きてきた悲しみを隠し持っている。
エドガーがひたすら守りたいと願い続け、アランが心惹かれ支えてほしいと思うような、
そんな小さな「マリア様」みたいな存在なんだと思います。
メリーベルはまさしくその存在自体が「肝」なので、
見るからにメリーベルを体現してくれた華ちゃんに拍手です。

天真 みちる(ハロルド)
某SMAPの番組で「タンバリン芸人」としてインプットされてしまった天真さんですが、
それも納得の芸達者!
アランが継いだ資産を狙う叔父の芝居が出色すぎて、特筆せずにいられません。
欲にまみれた人間の、下心まる見えの嫌らしさ。
財産を手に入れるために、兄の妻に言い寄り、兄の息子と自分の娘を結婚させようとするしたたかさ。
天真さんは「言い寄るところがうまくできなくて」と話しておられましたが、
いやいや、十分にいやらしかったですよ、お金への欲望があけすけで。
この世俗の汚れた部分が、それとは縁のないバンパネラ一族の存在を、
より特殊なものに見せていたようにも思います。
こういう人が、作品に深みを与えてくれるのですよね。

城妃 美伶(マーゴット)
「キャンディ・キャンディ」における、イライザポジ。
ただしいじめるのはヒロインではなく、
父親によって結婚をうながされている従兄のアランです。
(でも今回のこの作品、ヒロインはアランだよね……とも言われているので、当たらずとも遠からず?)
マーゴットも素直になれない女の子です。
父親に勝手に結婚相手を決められただけでなく、
その相手は死んでしまった婚約者を思ったまま、彼女に心を開かない。
これじゃあ、ちょっかいだしたり傷つけたりしたくもなってしまいます。
城妃さんはその姿の華やかさに、意地っ張りな性格が程よくマッチして、
本来なら嫌われそうな役どころを、共感できるように演じていたように思います。
このアランとマーゴット、ふたりが家から解放され、本当に素直になることができたら、
もしかしたら良い夫婦になれたのかもしれません。

もっと書きたい人がいろいろいますが、力尽きました。(苦笑)
クリフォード先生のことを書かなくてはいけないから……。

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