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『マリー・アントワネット』 惣領冬実 著 

『マリー・アントワネットの「嘘」』を読んでから、漫画「マリー・アントワネット」を読みました。
ヴェルサイユ宮殿が監修したという画期的な漫画本編はいかに?



この本を購入したとき、特に気をつけて見なかったのも悪いんですが、
「ベルサイユのばら」のようにシリーズものとして巻を重ねていくとばかり思っていました。
しかし上記の製作ドキュメンタリー本を読んで、今作がたったの160pしかないことを知り愕然。
そのとおり、表紙には巻数を表す「1」がありませんでした。
ヴェルサイユ宮殿が監修し、徹底的に資料を調べ上げ、こだわりをもって描いた意欲作のはずなのに、
たったの160pというページ数では正直「物語」の序章しか描けず、物足りなさばかりが心に残ります。

もちろん、その作画は精緻で非常に美しいです。
ドレスや調度品、宮殿の内装や床の模様に至るまで、写真の如き描写は驚くばかりで、
作者の(良い意味での)執念と苦労に惜しみない拍手を送りたいほど見事です。
壮麗なヴェルサイユ宮殿の一室でひとり佇むマリー・アントワネットの絵は、
彼女の不安や孤独感をよりいっそう強く打ち出していて、絵の持つ凄みを感じた瞬間でもあります。

一方物語はというと、絵ほどのインパクトは残念ながらありませんでした。
マリー・アントワネットとルイ16世の結婚生活が当初上手くいかなかったのは、
 ○マリー・アントワネットが幼すぎる姫であった
 ○ルイ16世は聡明で、ムダなおしゃべりはしない(できない)タイプだった

ということを下敷きに、ふたりが結婚して共に生きていく決意をするまでを描いています。
デュ・バリー伯爵夫人とマリー・アントワネットとの確執は、宮廷内の派閥闘争の結果であって、
マリー・アントワネットが個人的に嫌っていたわけではないということが、
エピソードのひとつとして登場するところは興味深い点ですね。
そういったエピーソドも含めて後の伏線となりそうなものも入れ込まれているのですが、
「話はこれから!」というところで「完」になるという、あまりにも消化不良な仕上がりです。
なんというか「強制終了」を食らった感じがあります。

こちらの漫画は、ヴェルサイユ宮殿の物販コーナーにも置かれるそうなので、
観光地で売ってる「ガイド本のひとつ」とすれば、
非常にクオリティの高いお土産アイテムかもしれません。
- マリー・アントワネットとルイ16世のネガティヴなイメージを覆し、
なおかつ宮殿の素晴らしさを紹介する -

ヴェルサイユ宮殿がそういう狙いで発注したのだとしたら成功だと思います。
でも日本には「ベルサイユのばら」という、
マリー・アントワネットとフランス革命に関する金字塔とも言える作品があり、
その他にも同テーマを扱った読み応えある作品がたくさん出版されています。
そこへ「ヴェルサイユ宮殿監修」として切り込んでいくには、圧倒的にパワーが足りないです。
これではあまりにももったいないです。
惣領版マリー・アントワネットとルイ16世の描写は好きですし、
このふたりがなぜ断頭台に散ることになるのか、
せっかくヴェルサイユ宮殿の監修を受けられるのなら、そこまで描いてほしかったな……。
[ 2017/03/22 00:01 ] コミックス | TB(0) | CM(0)
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