Harryのかぎ十字

今日はちょっとヘビーな話です。

Harryといっても、みんなに愛されているハリー・ポッターのHarryではありません。
英王室の皇位後継権を持つ、ハリー王子のことです。
すでに各方面で報道されている通りですが、
ハリー王子がナチス・ドイツの軍服姿でパーティーに出席したという騒動の件。
そこで気になったのが、ドイツの報道なんですよね。
ドイツでは、ナチスに関する用語やマーク、標語などの使用が、
法律で禁止されています。
有名な「ジーク・ハイル」や「ハイル・ヒトラー」だとか、
ナチ式敬礼なども、処罰の対象になっているわけです。
それに従い、車のナンバープレートからも、
このナチ用語の組み合わせが外されたといいます。
ドイツのナンバープレートは、地名の省略文字と英数字からできているのですが、
その省略文字は、例えば首都ベルリンはB、かつての首都ボンはBN、
陶磁器が有名なマイセンはMEI、フランクフルトはFというようになります。
この地名の省略文字の部分が大きな問題だったわけです。
ナチスに関連する省略文字として代表的なものには、
SA (Sturmabteilung 突撃隊)
SS (Schutzstaffel 親衛隊)
HJ (Hitlerjugend ヒトラー青年団)
KZ (Konzentlationslager 強制収容所)
NS (Nationalsozialismus ナチズム)
などがあるのですが、これらがたとえ地名の頭文字と重なっても、
使ってはならないということなのです。
ドイツは、ナチ問題には当然ながら非常に神経を使っており、
今もユダヤ人に対する補償問題や、新たなネオナチ台頭に悩んでいます。
そんな国で、イギリスの大衆紙"The Sun"に掲載された、
ドイツでは禁止のかぎ十字を左腕につけたハリー王子の姿は、
どんな風に報道され、受け止められたのでしょうか。
そう思って、ドイツのニュースサイトを読んでみました。
記者のコメントによると、イギリスでは、ナチをよくパロディーにするようです。
あるパーティーにドイツ人が出席すると、
「君は、オレが初めて会うナチの人間だぜ」と言われたり、
乾杯のときに「ハイル・ヒトラー」と言われたりする。
チビで口ひげをつけたコメディアンが、ヒトラーの物真似をして笑わせることもあり、
それは皮肉や悪意というよりも、単なるブリティッシュ・ユーモアらしいのです。
しかし、王室メンバーがそういうことをやるのはどうなのか…。
記事を読んでみると、ハリー王子は友人の誕生パーティーに出席したようですが、
仮装のモットーは「原住民と植民地支配者」ということだったようです。
私としては、そのテーマ自体どうかと思いますけれどね。
そこでハリー王子は、アフリカ方面軍司令官エルヴィン・ロンメル元帥を、
その仮装の対象に選び、ああいったいでたちで登場したらしいのです。
それを知ったとき、やっぱりなあと思いました。
ロンメル元帥のことまで触れていると長くなるので割愛しますが、
忌まわしいナチの中において、おそらく唯一慕われていた人だからです。
記者は最後に、ハリー王子が文書や父・チャールズ皇太子の広報官を通じてではなく、
自らカメラの前に立ち、多くの人を傷つけたことを詫びるべきである。
それができなければ、一人の人間として見ることはできないと結んでいました。

私が今回の騒動を知って感じたのは、ハリー王子の浅はかさとか、
王子教育はどうなっているのだろうかとか、そういうことではないんです。
歴史は風化するということを、強烈に感じたのです。
奇しくも今年は、ナチの強制収容所解放60周年だそうです。
関係者の多くは、すでに70代以上でしょう。
35歳以下で「アウシュヴィッツ」のことを知っている人は、6割とか。
こうやって歴史は風化し、忘れられていってしまうんですね。
有史以来、人々はずっと戦争を繰り返してきました。
もちろん時代によって社会の成り立ちも考え方も違いますから、
一括りにして言うことはできないと思います。
しかし例えば、いくら第二次世界大戦のことを残そうとしても、
いつしかそれを全く知らない人間だけになってしまう。
身をもって体感した人がいなくなれば、
戦争の愚かさや悲惨さなど、机上の話にしかならないのです。
……歴史は繰り返す。
それは、人が歴史に学ばないからではなく、歴史を忘れるからなのだと、
今回の一件で実感することとなりました。

6 Comments

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2005/01/20 (Thu) 01:30 | REPLY |   

Katharina  

■コメントくださった方へ
レスする場所がないので、ここに書かせていただきます。
コメントありがとうございました。
仰ること、全くその通りと思います。
「つなぎ止める」っていい言葉ですね。
歴史は時代を経るごとに評価が変わっていく。
複雑であり、でもそこが面白いとも思います。
だからこそ、それに関わる人、貴方のような存在は、
とても大事だと思っています。
これからの活躍に期待しています(^^)
またお越しくださいね。

2005/01/20 (Thu) 01:59 | REPLY |   

ここ  

風化という事も無論あるでしょうが、当事者か否かという事も有るでしょう。
イギリスはドイツの戦勝国です。
未だにドイツを軽んじている傾向は有るのでしょう。ナチもヒットラーもドイツを自分達よりは下に見るうえでのパロディの一種にしている。それが当時行なわれた事への検証の上で適切な事では無いとか、人道的見解とかは別にして、事実的な見解に留めたとしてだと思います。
アメリカが未だに日本に対してジャップといっているのをはばからないのと同じ事では無いでしょうか?
どうも人間というものは自分の下にいるものを作りたがる、という事を何かで読んだ事が有りますが、一般的な傾向としても、これは事実だなぁ、と思うのです。

風化という点についてというよりは、歴史に関する無知なのだと思います。教える側が教えるべきことを教えようとしない事も有りますが(此れは下に書いた理由も有るのでしょうねぇ)、また自分の国がどういう歴史を辿ってきたか知ろうとする傾向も少ないと思います。
先のワールドカップで韓国と共催の時、両国の歴史的関わりが関心が持たれたものでしたが、それもそのときだけのイベントのようなものに終わり。
他の周囲の国が何故隣の国、御近所だというのに、悪感情を持ち続けられているのか、少し歴史的背景を振り返ってみれば判る事だと思います。
この間のサッカーでの中国との衝突、あれもいまさらと思わずにはいられなくも有りましたが、やられた方は忘れられないとも何かで読んだ事があります、その通り、しっかりとやられた歴史を教えられた方にはまだ続いている事なのかも知れません。恐ろしい事ですが。日本でも原爆に関してはそうなのではないでしょうか?
ドイツはそれでもナチ狩り?(表現悪しですか^^;)を今も続けている=(自分らが行なった)戦争責任を果たし続けてるといえると思いますが、我が日本はどうなのか?
自分ごとですが、以前中国の人(それも大連出身)とペアを組んで仕事している時にその話がふと出て、日本代表?として謝ったという事が有りますが、一民間人にそう言う事しなければならないと思わせる国家とは?
カギ十字も迷彩服も今や確かにファッションの一部。此れは正しく風化とは言えるでしょうが。ジャップという意味が判らない人も多いと思いますよ、多分。此れもですね^^

ドイツでもネオナチの台頭とか有りますが、此れ来日本でもたびたび出てきて議論の的になる戦争擁護論と同じく、自分の国の過去を正当化する動きとも思えます。
誰だって自分が(たとえしたと自覚の上でも)したと思いたくないものだし、認めることは難しいものだから。
しかも、その行なった国民という当事者では有るかも知れないけれど直接したという当事者では無いのですから。
今義経をやっていますが、その中の奢る平家久しからずでは無いけれど、その言葉を噛み締めるべきではないかと。
日本は敗戦国ですが、戦後他の近隣諸国とは体制のとり方から、飛躍的な発展を遂げたのだと思います。
今その体制を見直し、近隣諸国が徐々に持ち返して来ている。
此れからが真の正念場なのかも知れないのかもと思います。

2005/01/21 (Fri) 10:57 | REPLY |   

Katharina  

■ここさま
コメントありがとうございます(^^)
同じ敗戦国といっても、ドイツの場合と日本の場合とでは、後の処理の仕方も違いますし、あまり比べることはできないかと思うのですが…。
確かに自分の国の過去に(もしかすると現在にも)関心がないという傾向は、世界的に見受けられることなのかもしれません。
ただ、例え関心を持ったとしても、その事柄の当事者が亡くなり、当事者と関わった人たちが亡くなり、全く何も知らない世代だけになってしまったとき、やはりその事柄は評価も変わっていくと同時に、風化もしてしまうのではないでしょうか。つまり、歴史の一項目としてしか、捉えられなくなってしまう時が来るということです。それは、何かの遺跡を見て、「へ~、ここで○○があったのか…」というような感覚に近いものと想像します。それゆえに、その事柄をきちんと伝え残してくれる役目が必要なんでしょうね。例えば、歴史の研究をされるような方たちですとか。
そんなことを、今回の騒動を見てなんとなく思ったので文にしてみたまでです^^;
ネオナチに関しては、日本の戦争擁護論のような、自国の過去の正当化という部分もあるかと思いますが、実際はまた別な問題も孕んでいるようなので、一緒にはできないかなと個人的に見ております。
そうそう、ジャップといえば、大河の前のアニメ「ポアロとマープル」に出てくる警部、原作ではジャップ警部なのに、アニメではシャープ警部になってるんですね。これって配慮した結果なのかなーと、一人勝手に解釈しております^^;

2005/01/21 (Fri) 22:41 | EDIT | REPLY |   

ここ  

それはそうですね。
比べようは無いでしょう。
ドイツに怒られますわ。
自国の悪い面ばかりを論うので、顰蹙を買うのでは有りますが(当たり前か~)その自国が周りからも自らも悪い面など見出せなくなって欲しいと思えばなのですけれどね~。
まぁ、其々のお国の事情も、背景も有りますから、ともかくとはしても、自分個人としては他の国の方と対峙するとき、したときに自国の事(現状や歴史のことも共に)自分なりには語れるようでなければとは思っているのですよ^^

2005/01/22 (Sat) 00:30 | REPLY |   

Katharina  

■ここさま
レス遅くなりました。
自分の国のことが語れるようにというのは、全く持って同感です。
中国の方とお仕事をされたときの経験、私もよくわかります。
同じような経験をいくつかしましたから。
そんなとき、きちんと歴史を理解した上で、彼らと話ができればと何度も思いました。
アジア各国が様々な方面で力をつけてきている今、
確かにここからが日本の正念場なのかもしれませんね。

2005/01/26 (Wed) 17:55 | EDIT | REPLY |   

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  •  イギリス王室と日本の皇室
  • よくも悪くも『イギリスの王室』のユニークさ?が出たように思いました。日本ではああいうどんちゃん騒ぎのパーティーに皇太子殿下が出席されることはないですし、たとえば秋篠宮様が日本の軍服を着て外に出るということも、今とはなってはありません。どちらがいいと
  • 2005.01.20 (Thu) 12:10 | 東海道線通勤日誌