青ひげ~異端の貴族~

以前おーるめんずで収録されたドラマCDで「ベルばら」を聴いたのですが、
あれが意外と(!)きちんと作られた作品だったためにちょっと興味を持ちまして、
今回同じレーベルさんから出ている「青ひげ公」の物語にチャレンジしてみました。
もちろん前回同様こちらもおーるめんずですが、
女性の役は1つしかありませんので、さほど気にする必要もないかなと思った次第でして。
で、結論!
これはオススメです。
ええ、オススメです!
物語としてもとても切なくて良いお話に仕上がっていますが、
何よりみなさんの芝居が本当に的確で引きこまれまてしまいます!
男性が演じるヒロインも違和感がありません。

さて、そんなオススメの青ひげ公の物語なんですけど、
実は最初のトラックを聞いて「ええええ~~~?!」となりました。
「私の知ってる青ひげちゃう!!!!」
そう思ってですね、途中でいったん聴くのをやめてぐーぐる先生の門を叩きました。(笑)
私が触れたことのある青ひげ公の話は、バルトークのオペラ「青ひげ公の城」です。
こちらは、青ひげ公と結婚した女性が陰気な城を明るくしようとするのですが、
7つある「開けてはいけない扉」を1つずつ開けていくに従って、
彼女は夫への不審感と恐怖心を募らせていき、最後は夫の手にかかる……といったあらすじです。
7つの扉には拷問器具や武器、財宝などが入っているのですが、どれも血塗られています。
これらは人間の欲望だとか罪だとかを象徴していると言われ、いろいろな解釈がなされています。
青ひげ公といえばもうひとつ「妻殺し」のお話もあって、
扉の中には死んだ妻たちが入っている……というような設定もあります。
しかしこのドラマCDは、このどれでもない展開で、
しかも冒頭にこのレーベルさんにふさわしいB○シチュエーションが!!!!!!!
さすがに、こう、非常に直接的なシーンというものではありませんが、
免疫のない人には「ガツンと一発食らわせてやるぜ!」的なインパクトがございます。(苦笑)
あるいはこちらを好物とされている方々(笑)には、「キター?(゚∀゚)」的な感じかもしれません。

そんなわけで「一発ガツンと食らわせられた」ワタクシは(笑)、
ぐーぐる先生の指導を受けまして、結果この作品がグリム童話と史実を上手くミックスし、
さらに女性向けにと非常によく練られたものである
ということがわかりました。
とりあえず、まずはキャストから。

ジル・ド・レイ伯爵:遊佐浩二
ジャンヌ・アスラン:日野 聡
ジョー・ランス:櫻井孝宏
アンリ:梶裕貴
クラン神父/ナレーション:堀内賢雄
少年:宮永恵太


あっはっはー、すいませんね、わかりやすくて。(爆)
そうなんです、遊佐さんが主役だったからこの話を選んだのですー。
このジル・ド・レイ伯爵というのが青ひげのことでして、
その異名の通り青いひげが生えているとされています。
実像は、あのジャンヌ・ダルクとともに戦った英雄であると同時に、
快楽殺人という嗜好を持っていて、おまけに少年が大好きという人でした。
そのために近隣から少年を拉致し、快楽に耽り、挙句に彼らを殺す。
しかも黒魔術に傾倒していたそうですから、その残虐性は目を覆うばかりです。
これをドラマCDでやったところで、当然ですが共感は得られません。
そこで採用されたのが「二重人格」という設定でした。
もうこの、遊佐さんが演じる二重人格のジル・ド・レイ伯爵が素晴らしかった。
決して贔屓目ではなく、共演のベテラン堀内賢雄さんが悔しがってくださるくらい、
言葉通り「堪能できる」芝居を聞かせてくれています。
長くなったので、キャスト交えた詳細はたたみます。(←今から詳細^^;)



青ひげ~異端の貴族~青ひげ~異端の貴族~
(2011/07/28)
イメージ・アルバム、遊佐浩二 他

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『あらすじ』
美しい貴族の娘・ジャンヌは、幼い日の初恋を胸に秘めたまま、
ジル・ド・レイ伯爵と結婚することになった。
軍人でもあるジル・ド・レイ伯爵は決して醜くはないものの、
その容貌から『青ひげ』と呼ばれている。
結婚式直前に初めて会った二人は、互いに数年前に出会っていたことに気付く。
ジルの改めてのプロポーズに心から応じ、満ち足りた幸せな日々を過ごすジャンヌだったが、
連続少年失踪事件を捜査しているという異端審問官ランスの出現によって、
平穏な日常の歯車が狂い始める。
ジャンヌの知らないジルの“秘密”…。
その“秘密”が暴かれた時、二人の絆が引き裂かれる―――!


まずヒロイン、ジャンヌ。
演じる日野聡さんは中低音~中音域のいわゆるイケメンボイスをお持ちで、
もともと声質が丸いこともあって、女性としての発声に違和感がありませんでした。
夫を愛し心から信じるさまを、ぶりっ子ではなく自立した女性に聞かせていたのは、
日野さんだったからだと思います。
確かに語尾の処理などに女性独特の柔らかさがほしいところではあるのですが、
これは他の部分がとても良いから出てくる贅沢な要求というもの。
高い声の女性に可愛らしく演じられたら、かえってがっかりしただろうとすら思います。
特にジルの正体がわかってからの演技が良かった!
夫を信じたい。それなのに夫が怖い。
「でもやっぱり愛している!」
華奢な体からほとばしる愛情が感じられて、ものすごく共感しました。


ジョー・ランスは異端審問官で、少年失踪事件の犯人をジルだとにらみ、
ジルとジャンヌの周辺を嗅ぎまわります。
演じているのは櫻井孝宏さん
櫻井さんは中低音でキュッと締まった細めの声(声量ではなく声質)が特徴。
その締まった細めの声が、幸せな家庭に水を指し、執拗に嗅ぎまわる男にピッタリ。
櫻井さんの感情のない、笑った眼の奥でじっと探っているような芝居が緊張感を生んでいます。
リスナーもジルを信じたいので、ジョー・ランスのしつこさにイライラ。
それがラストで、ちょっとだけ優しい表情を見せてくれるのがたまりません。

ジルの餌食になる少年アンリを演じているのは梶裕貴さん
10歳の役です。
この役、本当にちょっとしか出番がないんですよ。
出てきたと思ったらもう餌食になって退場なんですよ。
そんな役に、よく梶さんを起用したなと。
ジルの残虐性を強調するには少年の純粋無垢な愛らしさが必要なので、
それがわざとらしくなく演じられるとなるとそれなりの技術が必要だとは思いますが、
それでもここに梶さんを持ってくるなんて贅沢すぎる!
そしてもちろん梶さんは、アンリを聖歌隊でも目立ちそうな、
可愛らしい少年として息づかせてくれました。

町の教会のクラン神父。
彼がこの物語の鍵を握っています。
これはもう、演じている堀内賢雄さんだからこその圧倒的存在感!
神父としての深い慈悲と、人としての狂気が、
何の疑問もなくひとつの人間の中に存在しています。
さらに賢雄さんはナレーションも担当されていますが、
この淡々とした、けれど落ち着いて運ばれるナレーションが非常に心地よいんです。
まるで物語のページをめくるかのようで、その一言一言で全体をグッと引き締めてくれています。

最後に主人公のジル・ド・レイ伯爵。
遊佐浩二さんは爽やか系を演じられるときは高めのトーンを使われますが、
今回は男性演じる女性が相手ということもあってか、地声に近い低めの声でした。
地声バンザイ\(^o^)/
演じているジルの中には、2つの人格が同居しています。
表のジルは、妻を心から愛し思いやりにあふれた優しい男。
爽やかで、包み込むような口調にメロメロっとなってしまいます。(笑)
一方裏のジルは、少年への快楽殺人を好む、異常人格を持つ男。
声は表のジルと同じなのですが、その口調は冷たくて陰湿で、聴く者をゾッとさせます。
声も芝居もそれほど差があるわけではなく、口調がほんの少し変わるだけなのですが、
だからこそ二重人格なのだということを納得させてくれ、
より一層その悲劇性が強調されるのです。

うわーーーーー、1枚で2つの味!
遊佐さんファンは聴いて損はありません!!!!!!!!!!!!


私がこのCDを聴いて強く思ったのは、
「キリスト教って残酷だな」ということでした。
キリスト教徒は自殺ができません。
ジルは己の二重人格性を知り、自らを葬り去ろうと決意します。
けれど彼は信仰心に厚かったでしょうし、自ら命を立つことはできません。
だから妻であるジャンヌに「自分を殺してくれ」と頼む。
これほど残酷な仕打ちがあるでしょうか?
愛している夫、本来の顔を取り戻そうとしている夫を、どうして殺すことができるでしょう。
できない、できるわけがない、できないよー!
いくつか感想を見て回った感じでは、みなさんラストに涙しておられたようですが、
私はこのシーンでもう胸が苦しくて苦しくて、呼吸困難になりました。
これまでもこういう展開の作品はいくつも触れてきたはずなんですが、
こんなにも辛くなってしまったのは、やっぱり「愛」の力……。(←)

作品も皆さんのお芝居も、本っっっ当に大満足の1枚でした!
(BGMが安っぽいヒーリング音楽ちっくだったのだけが、ものすごーーく残念です。)

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