朝ドラ「あまちゃん」
早あま、朝あま、昼あま、夜あま、録あまと1日5回も見ていたあまラーのみなさんは、
あまロス症候群に罹っていませんか?
ちょうど昼のバラエティ番組でこの「あまロス症候群」を取り上げていましたが、香山リカさんが、
○毎日の日課がなくなる喪失感
○知り合いがいきなり40~50人いなくなった感じ
というような解説をされていたのにうなずきつつも突っ込んでしまいました。(笑
40~50人はさすがに盛り過ぎだろうと。(苦笑
でもこのドラマを見て、「北三陸市」が実在してそこに「知り合いがいる」気になったのは事実です。
「あまちゃん」、実は私のリアル周りで見ている人、あまりいなかったんですよね。
それどころか「どこが面白いのかわからない」と言われることのほうが多かったんです。
「あまちゃん」の面白さって何だろう?
一言では答えられなかったので、ムダに長く考えてみました。(笑
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「あまちゃん」では特にこれという事件が起きません。
家が火災にあったり、恋人が病で死んだり、お父さんが事業に失敗したり、
戦争で焼け出されたり、意地悪な伯母さんが出てきたり、そういうものが一切ありません。
実際物語は3~4年の出来事でしかないので、一生を通して数々の困難を乗り越え、
ヒロインが成長していく……というものでもありません。
「震災」という大きな事件は起きたけれども、
それは登場人物全員に降りかかった災難であって、それぞれが色々な立場で違う体験をし、
その結果主人公だけが苦しむというものではありませんでした。
いわゆるドラマチックなことは起こらず、ひたすら「リアス」だったり「梨明日」だったりする場所で、
あるいは「無頼鮨」で日常が進んでいくだけです。
そういう面から見ると、「面白くない」という意見も一理あるのかもしれません。
じゃあどこに面白さがあるのか。
まさにその「面白くない」部分が、私は「面白かった」と思うんですよ。
もちろん、随所に散りばめられたパロディや小ネタや歌の数々は楽しさを倍増してくれました。
「知ってる知ってる!」
「これ歌える!」
「このネタ、あれのことだな?」
共有できる話題が多ければ多いほど、作品への共感度はUPします。
そしてとにかく「楽しく」なるように作られていました。
辛いことや悲しいことを描いても、そこに必ず何がしかのフォローが入って笑いを取り戻しました。
でもこの作品の本当の面白さは、
役者の強烈な個性の上に成り立つ「ユルさ」
に、あったんじゃないかなと思うのです。
まず視聴者は、小泉今日子さんがアイドルだったことを知っています。
薬師丸ひろ子さんもアイドルでしたし、美保純さんも人気若手女優でした。
宮本信子さんは夫を亡くされ、古田新太さんは何でもこなす役者さんです。
キャラクターの向こうに、そうした役者さんの「素」が透けて見える。
役者さんたちの持つバックボーンが、キャラクターとかぶって見える。
だから視聴者は彼らをより身近に感じやすかったのだと思います。
狙っていたはずですから当然ではあるのですけれども。
そうなってくると、ストーリーだけでなく、
「大吉さんどうするんだろう」とか「春子と鈴鹿さんが話し合うなんてドキドキッ!」とか、
「ストーブさんが残念なイケメンすぎる」とか、「勉さんは家族がいるのかしら」とか、
キャラクターやキャラクター同士の関係性に注目し始めちゃうわけです。
だからといって、すべてがきちんと書き込まれていたわけじゃありません。
むしろ描いていることよりも描いていないことのほうが多かった気がします。
最終的に、放り投げたまま終わったエピソードもいくつかありましたしね。
でもそれが「消化不良」を起こさせるどころか、「勝手に想像する楽しさ」を与えてたと思うんです。
「きっとこうだったんじゃないかな」とあれこれ考えを巡らせられる「ユルさ」があって、
その絶妙な配分が、私にとっては逆にリアルだったんですよね。
私たちの実際の人間関係だって、「相手のことを知ってるようで知らない」ものじゃないですか?
登場人物は、ドラマの空間ではなく「私たちと同じ日常の空間」で生活していました。
彼らはみんな驚くほど違う方向を向いていたけれども、みんな真剣に一生懸命生きていて、
私たちと同じフィールドに立っていました。
アイドルになるというテーマは別として、
そこには私たちでも体験しうる生活がありました。
話はときにバカらしくてくだらないこともあったかもしれません。
けれど彼らが発する言葉には嘘がなかった。
だから楽しく突っ込んだり笑ったりできたんじゃないかな……。
私にとっては、知り合いの近況を聞くような、そんな毎日の15分で、
そこが「面白い」と感じる部分だったんです。
役者、脚本、演出のすべてがぴたりとハマった稀有な作品だったと思います。