年賀状
こんなに早く注文したのは初めてです。
今年年賀状を受け取ったとき、あんな大震災が起こるなんてこれっぽっちも想像していませんでした。
誰1人として、そんなこと予想していなかったと思います。
占い師のみなさんはどうなんでしょうか。
どこかで「今年は古いものを壊して生まれ変わる年だ」と書いておられた方を見かけましたが、
そうだとしてもこの震災はあまりにもむごすぎると思います。
今でも毎日、震災で亡くなられた方のお名前が新聞に掲載されます。
ようやく身元がわかったのだと思いますが、
この方たちだって、今年のお正月には「あけましておめでとう」を交わし、
年賀状を交換し合い、それぞれにおせちを楽しんだはずなんです。
それなのに。
たった一瞬で何万という命が消えてしまったことに、今また背筋が凍る思いがしています。
ただそれが恒例だからと口にしていた「あけましておめでとう」が、
来年はどれだけ貴重なものに感じられることでしょう。
年賀状の1通1通が、どれほど嬉しい便りに思えることでしょう。
「十二国記」という小説の中では、「蝕」というものが起きます。
いわゆる自然災害なのですが、これが起こると十二国とこちら側、
つまり蓬莱(日本)や崑崙(中国)との間に道ができます。
当然、その道を伝って両サイドに大被害が出ます。
現象としては竜巻のようでもあり津波のようでもあると思いますが、
今回の震災でこの「蝕」を思った人は少なくなかったはず。
もし蝕であれば、流された十二国のどこかで生きていてくれる……そんな想像をしたこともありました。
もちろん十二国で生きることは困難を伴います。
でもたどり着いたのが延なら、慶なら。
蝕は、蝕む(むしばむ)からきているのだと思いますが、
十二国では国の統治者である王が倒れると国土が荒れます。
天変地異が起き、妖魔が蔓延るようになる。
まさしく国が蝕まれていく。
今の日本、いえ世界全体が、それに近い状態に見えるのは私だけでしょうか。
その統治者とは、特定の人物ではなく、「人間そのもの」かもしれません。
年賀状の申込書を書きながら、そんなことを思った夜でした。